土地所有権の放棄ってなんなの?簡単なのかしら?

土地所有権の放棄は、日本全国で多くの人々が直面する現実的な問題となっています。

高齢化や過疎化が進む中、利用価値の低い土地を所有し続けることが経済的負担となり、維持管理のコストも馬鹿になりません。

このような状況下で、土地の所有権を放棄したいという声が増加していますが、現行の法制度や地方自治体の対応により、実際に放棄が認められるケースは少ないのが現状です。

この記事では、土地所有権の放棄についての法律的な背景や実際の事例、さらに所有権放棄が困難な理由について詳しく解説します。

また、土地所有権放棄の代替手段として、相続土地国庫帰属制度やその他の方法についても触れ、読者が適切な選択をするための情報を提供します。

土地所有に悩む方々にとって、有益な情報源となることを目指しています。

土地所有権の放棄とは?


土地所有権の放棄とは、土地所有者が自分の土地に対する所有権を自ら放棄し、法的にその土地を所有しない状態にすることを指します。

これにより、所有者はその土地に対する責任や維持管理の義務から解放されます。

土地所有権の放棄という制度は、個人が自由に権利を放棄できるという考えに基づいています。

実際、民法では、所有権以外の物権や債権について、権利者は原則として自由に権利を放棄することが認められています(民法第268条第1項、第287条、第519条など)。

ゴミとして捨てた物は所有権を放棄したとみなされる 
⇒ 第三者が持っていっても問題なし 
といった形と同じですね。

しかし、土地所有権の放棄については、所有者が本来負うべき義務や責任、管理コストを国に押し付ける側面があり、所有権の放棄が権利濫用とみなされ、認められない場合があると指摘されています。

実際、土地の所有権を放棄したと主張する者が国に土地の引取りを求めた裁判で、裁判所は土地所有権の放棄が権利濫用に当たり許されないと判断しました(広島高裁松江支部判決平成28年12月21日)。

民法第239条第2項では「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と規定されていますが、土地所有権の放棄の可否については現行民法に規定がなく、確立した最高裁判例も存在しないため、その可否は不明瞭です。

また、法務省の民事局の回答では否定的な見解が示されています。

この点に関して、広島高裁松江支部平成28年12月21日判決・判例秘書L07120885(原審・松江地裁平成28年5月23日判決・判例秘書L07151457)は、土地の所有権を放棄した結果、国が所有権を取得したと主張し、登記名義人が国に対して所有権の移転登記を求めた事例です。

裁判所は、不動産の所有権放棄を一般論としては認めたものの、本件での登記名義人による所有権放棄は、財産的価値の乏しい土地の管理費用や責任を国に押し付けようとするもので、権利濫用と判断し、請求を棄却しました。

このように、一般論として不動産の所有権放棄を認めつつも、権利濫用によって規制されることを示した点で、この判決は参考になります。

ある意味、不法投棄の側面を持っているのでダメだという判断だと考えると良いでしょう。

何でもかんでもゴミステーションには捨てれない 

⇒ 有料で引き取ってもらうゴミ=産業廃棄物

と考えればわかりやすいでしょう。


これまでの経緯から、土地の所有権放棄は、現実的には困難と考えられてきました。

前述の一審判決が指摘するように、土地所有権の放棄は管理コストを不当に国に転嫁する恐れや、土地を適切に管理しなくなるモラルハザードを引き起こすリスクがあります。

所有権を放棄された土地の管理や処分にかかる費用は国、ひいては現在および将来の国民の負担となってしまうからです。

結論として、土地の所有権の放棄は概念は存在するが、現状では難しいと言う事となります。


土地所有権を放棄したい理由

土地所有権を放棄したい主な理由は、経済的な負担の軽減と土地の利用価値の低下です。

具体的には以下の様な理由が挙げられます。

  • 維持管理費用が高い
  • 特に農地や山林などの利用価値が低い土地では、維持管理費用が所有者にとって大きな負担となることがあります。
  • 税負担
  • 土地を所有しているだけで固定資産税が発生するため、経済的負担となることがあります。
  • 利用価値の低下
  • 都市部から離れた地域では、人口減少や過疎化により土地の利用価値が低下している場合があります。


    放棄をしたい人が増える要因
  • 農村部や山間部での耕作放棄地の増加
  • 日本の農村部では、高齢化や人口減少により耕作を放棄された土地が増加しており、これらの土地の所有者が土地所有権を放棄したいケースが増えています。

  • 過疎地での空き家・空き地の問題
  • 過疎地では、相続などで土地を取得したが利用価値がなく、固定資産税の負担だけが発生するため、所有権を放棄したい人が増えています。

    土地所有権放棄の現状と法制度の背景

    土地所有権の放棄は、法律上可能とされているが、手続きや法的要件が厳格であるため、実際に放棄するのは難しい状況にあります。


    法制度の背景:日本の民法第239条第1項では、所有者が土地を放棄することは可能とされていますが、放棄の手続きには地方自治体への届け出が必要です。

    行政の対応:地方自治体は、放棄された土地の管理責任を負うことになるため、放棄を認めるケースは少ないです。

    国土交通省のデータによると、2018年から2023年の間に地方自治体に届け出られた土地所有権の放棄件数は約1000件に上りますが、実際に放棄が認められたのはそのうちの約30%に過ぎません。


  • 北海道の例
  • 北海道では、広大な土地があるため、所有者が管理しきれないケースが多く見られます。

    これに対し、地方自治体が一部の土地を引き受けるケースもありますが、財政負担が大きいため限界があります。

  • 都市部の空き家問題
  • 都市部でも空き家が増加しており、これらの所有者が土地所有権を放棄しようとするケースがありますが、法的手続きが厳しいため、自治体が積極的に受け入れることは少ないです。


    土地所有権の放棄は法的に可能ですが、実際には地方自治体の財政負担や管理責任の問題から難しいケースが多いです。

    これにより、放棄された土地の管理や再利用に関する課題が残っています。

    しかし前述のとおり、土地所有権を放棄したい理由を持つ人は増加の一途です。

    なので、早急な法改正や行政の対応が求められる所であった為、その現実的な解決策の一つとして相続土地国庫帰属制度が設けられ、令和5年4月27日にスタートする事になったのです。

    相続土地国庫帰属制度についてはこちら




    相続土地国庫帰属制度、所有権放棄以外の選択肢

    ハードルが高い相続土地国庫帰属制度所有権放棄以外の方法はない物だろうか?

    本来、相続土地国庫帰属制度所有権放棄よりも先に考え試みていると思いますが・・・。

    それ以外の方法についてもご紹介しておきます。

    1. 土地の売却を試みる方法
    2. 価値があると判断できる状態であれば、売却してしまうのが一番いいです。
      依頼先:不動産業者

    3. 相続放棄
    4. 相続放棄は家庭裁判所で行う法的手続きであり、期限(相続開始を知った時から3か月以内)を守る必要があります。
      相続放棄を行うと、その相続人は最初から相続人でなかったことになります。
      その為、デメリットとしてその他の資産についても相続できなくなります
      依頼先:行政書士・弁護士等

    5. 寄付や他人への譲渡
    6. 0円で誰かにあげてしまう方法です。マイナスの物を0円で済ませるのでメリットはありますが、後のトラブル等は注意が必要です。
      依頼先:マッチングサイトを利用するのが良いと思います。

    7. 有料での引き取り
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      費用は発生しますが、国庫帰属制度や所有権放棄よりははるかにコストがかかりません!


    それぞれ依頼先・相談先が違う事には注意して下さいね。

  • 不動産の売却については不動産業者

  • 相続放棄については行政書士・弁護士等の資格者

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