家を相続放棄したらどうなるのでしょうか?
相続に関する悩みは、多くの方にとって人生の中で一度は直面する問題です。
特に、両親や親族が遺した家をどうするかという問題は、感情的にも法的にも大きな負担となります。
「家は残したくないけれど、その他の財産は相続したい」
「空き家を維持する手間やコストを避けたい」
など、相続の際に家の処分に困っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、家を相続放棄することが可能かどうか、また、相続放棄後の空き家がどのように処理されるのか、さらには解体費用や管理責任の問題について詳しく解説します。
相続放棄は、一見するとすべての問題を解決できるように感じます。
しかし、実際には法的な手続きや後に残る空き家の管理・処分に関する現実的な問題が発生します。
例えば、相続人全員が家を放棄した場合、その家が放置されてしまうことや、最終的に自治体が関与して解体する際に費用が発生する可能性があることをご存じでしょうか?
また、家が倒壊した場合、誰に管理責任があるのか、相続放棄後の片付けは誰がするのかなど、相続にまつわる不安や疑問も多いはずです。
相続放棄は、親族間のトラブルを避けたり、不要な財産を引き継がないための手段として有効ですが、それが完了した後も新たな問題が浮上することがあります。
この記事では、そうした問題点にフォーカスし、具体的な手続き方法や対策について、実例を交えながら分かりやすく説明していきます。
今まさに相続放棄を考えている方や、相続に悩んでいる方が、より良い判断をするための手助けとなる内容をお届けします。
ぜひ、相続放棄に関する疑問を解消し、後悔のない決断ができるよう、最後までお読みください。
家を相続放棄したらどうなるの?
- 家だけを相続放棄することはできますか?
- 相続人全員が家を相続放棄したらどうなる?
- 相続放棄した空き家はどうなるの?
- 相続放棄した家の解体費用は誰が払う?
- 相続放棄した家が倒壊した場合の管理責任は?
- 相続放棄した家の管理義務はいつまで?
- 相続放棄した家の片付けは誰がする?
家だけを相続放棄することはできますか?
家だけを選んで相続放棄することはできません。相続放棄を行うと、全ての相続財産(資産と負債の両方)を放棄することになります。日本の民法では、相続放棄は包括的であり、特定の財産だけを選んで放棄することは許されていません。相続放棄は、すべての相続財産を受け取らないと宣言するもので、家だけを切り離して放棄することはできません。
参考: 民法第939条「相続放棄は相続開始時からの効果を持つため、相続人は遺産の一部について放棄することはできない。」
実例:Aさんは亡くなった親の家を相続放棄したかったが、他の財産(現金や株式)を相続したいため、法律上、家だけを放棄することができないとわかりました。
家だけを相続放棄することはできず、相続放棄を選んだ場合は全ての財産が放棄されるため、慎重な判断が必要です。
こちらを参考に
相続放棄する手続きについて
相続放棄を行うためには、家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。手続きは相続開始から3ヶ月以内に行わなければなりません。相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申述書を提出することから始まります。
この申述書には、相続人が遺産を全て放棄する旨が記され、裁判所で審理が行われます。
3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、この間に相続するか放棄するかを決定しなければなりません。
参考: 民法第915条「相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければならない。」
実例:Bさんは親が亡くなり、負債が多いことがわかったため、相続放棄を決意。申述書を提出し、手続きを無事に完了しました。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行われ、3ヶ月の期限内に対応しなければなりません。
相続人全員が相続放棄したらどうなる?
相続人全員が相続放棄を行った場合、その家は最終的に国の管理下に移ります。全ての相続人が放棄した場合、相続財産管理人が選任され、財産が整理されます。
その後、処分されない財産は最終的に国庫に帰属することになります。
参考: 民法第940条「相続人全員が相続放棄したときは、相続財産は国庫に帰属する。」
実例:Cさんの家族全員が古い家を相続放棄した結果、財産管理人が選ばれ、その後家は国の管理下に置かれることになりました。
相続人全員が家を放棄すると、国の管理下に置かれ、最終的に国が処理を行います。
相続放棄した空き家はどうなるの?
相続放棄された空き家は、法的には相続人の所有ではなくなりますが、国庫に帰属するまでは処分されず、無人のまま放置されることが多いです。相続放棄された財産は相続財産管理人が処理を行うまで、適切な管理がされないことがあり、特に田舎などでは放置される空き家が増加しています。
参考: 総務省のデータによると、日本には約8,490,000戸の空き家が存在し、その多くが相続放棄や持ち主不在のため放置されています。
実例:Dさんの親が所有していた家を相続放棄したが、誰も引き取らず、その家は数年間無人のまま放置されました。
相続放棄された空き家は処分されるまで無人のまま放置されることが多く、管理が行き届かないケースが多いです。
相続放棄した家の解体費用は誰が払う?
相続放棄された家の解体費用は通常、相続人が負担することはありません。ただし、家の所有者が不明であっても、地方自治体が強制的に解体する場合、自治体が費用を請求するケースもあります。相続放棄により、家の所有権は相続人に帰属しないため、原則としてその解体費用の支払い義務はありません。
しかし、倒壊の危険がある場合や近隣に被害を及ぼす可能性がある場合、地方自治体が家屋を取り壊す場合があります。
参考: 空き家等対策特別措置法に基づき、倒壊の恐れがある危険な空き家については、自治体が対策を講じることができます。
実例:Eさんの家族が相続放棄した古い家が倒壊の危険があったため、自治体が強制的に解体し、その費用を請求されました。
通常、相続放棄した家の解体費用は相続人が負担することはありませんが、自治体が介入するケースもあります。
相続放棄した家が倒壊した場合の管理責任は?
相続放棄した場合、相続人は家の管理責任を負わなくなりますが、相続財産清算人が選定されるもしくは国庫に帰属するまでの間、家が倒壊して被害を与えた場合には、相続人に一部責任が問われる可能性があります。相続放棄によって財産から手を引くことはできても、家が倒壊して他者に損害を与えた場合には、過失責任を問われるケースがあります。
このため、相続放棄後でも、一定の管理義務が生じる可能性があります。
参考: 民法第717条「土地工作物責任に基づく損害賠償請求により、倒壊による被害が発生した場合、過失の有無を問われる。」
実例:Fさんが相続放棄した空き家が倒壊し、隣家に被害を与えたため、一部責任を負うことになりました。
相続放棄後も国庫に帰属するまでの間は家の倒壊による責任を問われる可能性があるため、適切な対策が必要です。
相続放棄した時の管理義務はいつまで?
相続放棄後、相続人は基本的には家の管理義務を負いませんが、相続財産清算人が選定されるもしくは国庫に帰属するまでの間は一定の管理責任が残る場合があります。相続放棄によって法的には家の所有権を失うため、相続人に直接的な管理義務はありません。
しかし、国庫に移るまでの間に家が放置されて危険な状態になると、近隣住民から訴えられる可能性もあります。
参考: 空き家等対策特別措置法で規定される危険な空き家に対する対処法により、地方自治体が介入する場合があります。
実例:Gさんが相続放棄を申請した直後、家で火災が発生しましたが、まだ放棄手続きが完了していなかったため、暫定的な管理者として責任を負うことになりました。
相続放棄の手続きが完了し相続財産清算人が選定されるまでは、暫定的に管理義務が続きますが、完了後はその義務が消滅します。
相続放棄した不動産の片付けは誰がする?
相続放棄をした場合、その家の片付けや処分をする義務は相続人にはありません。片付けは次順位の相続人や最終的に自治体が行うことになりますが、放置されたままになるケースも少なくありません。相続放棄が成立すると、相続人はその家に関する一切の権利と義務を失います。したがって、家の片付けも相続人の責任ではなくなります。ただし、次の相続権を持つ親族が引き継ぐ場合、その親族が片付けや管理を行うことがあります。また、最終的に相続権が国に移る場合、自治体が処分や解体を行うこともあります。
実例:Iさんが相続放棄をした際、親族が次の相続順位を拒否し、家が長期間放置されました。その後、自治体が介入し、片付けと解体作業を行いました。結果として、地域住民からの苦情が発生し、手続きが遅れると近隣に迷惑をかけることが確認されました。
相続放棄後、相続人に家の片付け義務はありませんが、次順位の相続人や、状況によっては長期間放置されることもあります。
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